FIREとは?早期退職実現にはいくら必要?ポイントをFPが解説
「お金の不安や仕事のストレスから解放されて、自由に生きたい…」
このように感じたことがある方は多いのではないでしょうか。人生を自由に生きたい人が注目する生き方に「FIRE(ファイヤー)」というものがあります。
もともとはアメリカ発祥の考え方ですが、日本でもすっかりなじみのある言葉になりました。
本記事では、ファイヤー(FIRE)の概要やファイヤー達成のために必要になる知識、ファイヤーのメリット・デメリットなどをご紹介します。
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目次
「FIRE(ファイヤー)とは」
まず、今回紹介するファイヤーの定義について確認しておきましょう。
ファイヤーはローマ字でFIREと表現しますが、これは「Financial Independence, Retire Early」の略語です。各英単語には、以下のような意味が隠されています。
・Financial:「財政上の」「金融の」
・Independence:「独立」「自立」
・Retire:「退職する」「引退する」
・Early:「早い」「早く」「初期の」「初期に」
つまりファイヤーとは、経済的に自立したうえで仕事を早いタイミングで退職し、貯めたお金で生活していくスタイルのことを指します。
経済的に自立することで「生きるために働く」という必要がなくなり、仕事以外の趣味やボランティアを中心に生きたり、自分の好きな仕事に打ち込んだりと好きなライフスタイルを送れます。
今までの働き方・生き方を変えるスタイルであるとして、欧米を中心に世界各国で実現を目指す人が絶えません。
FIRE(ファイヤー)と早期退職の違い
ファイヤーと似たように感じる言葉として「早期退職」を思い浮かべる方もいるのではないでしょうか。
「定年よりも早く仕事を辞める」という点では共通する両者ですが、以下のような違いもあることを覚えておきましょう。
ファイヤー(FIRE) | 残りの人生に必要な生活費を全て貯金するのではなく、資産運用の元本のみを貯金する方法。 退職後も資産を運用することで生活費を賄えるだけの利益を出すことが前提であり、必要な元本が貯まれば退職できる。 |
早期退職 | 残りの人生に必要なお金を在職中に貯蓄し、リタイア後は残った貯蓄を消費しながら生活する方法。 資産運用をすることは前提にされておらず、「早期に退職する」という部分が強くフォーカスされている言葉。 |
早期退職は単に「定年よりは早く退職する」という点にフォーカスした言葉であり、退職後の生活費をいかに確保するかは考えられていません。生活費の全てを貯金してから早期退職できるのは、高年収な一部のサラリーマンに限られるでしょう。
一方のファイヤーの場合、老後の生活に必要な資金を資産運用で手に入れることを前提にしており、理論上は必要な元本が貯まった段階で退職が可能です。
FIRE(ファイヤー)を達成させるのに必要な知識
前章で、「FIRE(ファイヤー)は貯蓄した元本を資産運用して生活費を得る」と紹介しました。
つまり、ただ貯金すればファイヤーできるのではなく、どうやって退職後の生活費を確保するかの考え方を知っておく必要があります。
ここでは、ファイヤーを達成させるために知っておきたい知識や考え方について解説します。
FIRE(ファイヤー)が可能な目安は年間支出の25倍が目安
ファイヤーを実現するには、資産運用で毎月の生活費以上の利益を得ることが大切になります。
あくまでも目安ですが、ファイヤーを実現するには「毎年の生活費の25倍」を貯めることが必要です。
次に紹介する「4%ルール」とセットのルールにはなりますが、毎年の生活費の25倍の貯金ができれば、その元本を資産運用することで得られる利益だけで生活が可能とされています。
例えば毎月の生活費が20万円(毎年の生活費が240万円)と仮定すると、6,000万円の貯金を作ればファイヤーが可能と判断できます。
ただし、生活費がいくら必要になるかによってファイヤーを実現できる貯金額は変わります。毎月の生活費が30万円になれば、必要な貯蓄額は9,000万円に増えてしまいます。
FIRE(ファイヤー)の4%ルールとは?
ファイヤーを実現するための指標として「年間の生活費の25倍の貯蓄」とセットで覚えておきたい指標として、「4%ルール」もあります。
4%ルールとは、前章で紹介した「年間生活費の25倍の貯金」を年利4%で運用できれば、運用益だけで生活費を賄えることを意味します。
前章では「毎月20万円の生活費の人がファイヤーするには6,000万円の貯金が必要」と解説しました。
貯金6,000万円を4%で運用すると運用益は年間で240万円になるので、毎月20万円分の生活費を運用益だけで賄えることが分かります。
ただ、株式や投資信託の値上がり率や配当利回りは経済の情勢によって大きく変わります。時には10%以上の利益を得られることもありますが、リーマンショックやコロナショックなどの事件があったときはマイナスになることも少なくありません。
毎年4%の利益を得るのは簡単ではないことを前提として、できる限り安定して利益を得られる投資先の組み合わせを決めていくことになります。
FIRE(ファイヤー)のメリット
年間生活費を賄える利益を得るための投資元本さえ集まれば、資産運用の利益だけで生活できるファイヤーは多くの労働者にとって憧れの生き方でしょう。
ファイヤーを実現することで、以下のようなメリットを得ることができます。
仕事にとらわれず自由に生活できる
ファイヤーを実現することの最大のメリットは、お金のために働く必要がなくなることです。
ファイヤーは年間生活費の25倍の貯蓄をもとに年利4%で運用することで、理論上は元本を取り崩さずに投資の利益だけで生活できます。
よって、「生活費を稼ぐために無理をして働く」という必要がなくなります。
生きるためだけの仕事から離れ、本当に自分がチャレンジしたかった仕事に没頭したり、プライベートを優先して週1~2日のみ働いたりなど、お金の悩みから脱却して時間を自由に使えるようになります。一般的なサラリーマンが労働に充てる時間を、趣味や子育てに使うことも可能でしょう。
毎月20万円の生活費がかかる人がファイヤーするのに6,000万円の貯金を貯めるのは非常に大変なことですが、金銭的な自由を手に入れるために頑張る価値は十分にあるでしょう。
生活する場所を選べる
ファイヤーをすると、自分が生活する場所を選べるようになるのもメリットです。
会社員として働く場合、リモートワークが浸透しつつある現代でも、住む場所は制限されます。週に数回の出勤が必要なケースが多く、その場合は会社の通勤圏内に住まないといけないでしょう。
自営業やフリーランスの場合も同様で、顧客との商談や納品などがあれば、業務に支障がない範囲に住むことになります。
一方、ファイヤーをした人なら仕事を続けなくても生活ができるので、どこに住んでも構いません。日本国内はもちろん、物価の安い海外に住んで生活費を節約するといった選択肢もあるでしょう。自身のQOL(生活の質)を向上するのに最適な住環境を自由に選択できるので、毎日をストレスなく楽しく生活できるでしょう。
ただし、資産運用の結果を知るためには、ネット環境が整っている場所に住むことは必須です。
FIRE(ファイヤー)のデメリット
一定の貯金さえ貯まれば、資産運用することで元金を減らさずに長期生活が可能になるファイヤーですが、メリットばかりではありません。
ファイヤーを選択したことで自由を得られる代わりに、デメリットに感じる部分もあります。
ここでは、ファイヤーを選択したことで生じるデメリットについて解説します。
年4%の運用益が維持できないと続かない
ファイヤーは年間生活費の25倍にあたる貯金を実現したうえで、年率4%で運用することが前提の方法です。
しかし、投資にはリスクがあり、ときには運用結果がマイナスになってしまうこともあります。運用した結果がマイナスでも生活費は必要なので、元本を使って生活費を捻出することになるでしょう。
元本を減らしてしまうと「年間生活費の25倍の元本」という前提が崩れてしまうので、年利4%を実現しても元本を維持することができなくなります。元本が前提条件を満たさなくなった状態でファイヤーを継続するには、4%を超える運用益が必要です。
そもそも年利4%というのは、過去の米国の状況から導き出された数字で、日本の株式市場では実現が難しいケースがあります。
投資について十分な知識を持って米国など成長性の高い分野への投資を取り入れるなどの対策をしない限り、年利4%を実現し続けるのは大変と言わざるを得ません。
仕事のキャリアが止まってしまう
ファイヤーして自由な時間を満喫するには、今まで働いてきた会社を退職したり、自営業を廃業したりする必要性が生じます。
退職や廃業をすることで自由時間を満喫することができる一方で、仕事のキャリアに終止符が打たれるというデメリットがあることを覚えておきましょう。
仕事にやりがいを感じているなら、ファイヤーを達成できるとしても安易に退職しないようにしましょう。ファイヤーは自由な生き方を選択するための方法であり、仕事が大好きであれば無理に退職する必要はありません。
キャリア形成を進めて昇進できれば貯金がますます大きくなり、ファイヤーに必要な投資の利益を年4%より少なく抑えることも可能です。
急な高額出費に対応しにくい
ファイヤーのデメリットは、高額な出費に対応しにくいことです。
毎月の生活費が20万円の人なら6,000万円の貯金を年利4%で資産運用することで毎月20万円相当の運用益を得ることができますが、20万円は生活に必要な最低限の金額です。
- ・友人の結婚式に参加するためにご祝儀が必要
- ・家族で海外旅行に行きたい
- ・車を買い替えたい
このような、短期間で高額な出費が必要なシチュエーションが発生した場合、ファイヤーで得られる収入では対応できない可能性があります。
急な出費で貯金を使ってしまうと、年利4%の運用益を得ていてもファイヤーが維持できなくなるかもしれません。
突発的な出費まで見越して毎月の生活費を多めに計算し、それでもファイヤーできる金額まで貯金してから資産運用を始めるなどの対策が必要でしょう 。
FIRE(ファイヤー)を実現するためのステップ
ここでは、ファイヤーを実現するためのステップを紹介します。
ただ闇雲に貯金を繰り返すだけでなく、これから紹介するステップを1つずつこなしながらファイヤーの達成を目指しましょう。
FIRE後に必要な生活費を把握する
ファイヤーを実現させるには、1年間に必要な生活費を全て割り出すことが必要です。
まず、1ヵ月に必要な支出の平均額を割り出し、12ヵ月をかけてみましょう。忘れてはいけないのが、「自動車税」「NHKの受信料」「クレジットカードの年会費支払い」など、年に1回だけ発生する出費です。
毎月発生する固定費・変動費に年1回~数回必ず発生する出費を足すことで、より正確に年間の出費額を把握することができます。
また、項目ごとに「絶対に必要な最低ライン」を知ることも、ファイヤーの計画を練るには大切です。
家賃や住宅ローン等の住居費を削るのは難しいですが、娯楽費や服飾に関する費用は節約次第で今よりも必要金額を引き下げることが可能です。無理のない範囲で毎月の出費を抑えるほど、ファイヤーを早く達成させられます。
必要な資産額を確認する
年間の総支出額が分かったあとは、これまで紹介してきたように、25倍にした金額を計算してみましょう。これが、ファイヤーするために必要な最低限の金額です。
さらに、人によってはライフプランが全く異なるので、その分も視野に入れる必要があります。
例えば「●年後にもう1人子どもがほしい」「いまのパートナーと結婚したい」というプランがあるなら、その費用も含めて資金を考慮する必要があります。
また、退職後に受け取れる公的年金の金額も、必要な貯金額を計算するのに必要です。会社員として定年まで働かずに退職すると将来に受け取る年金が減額され、その分は貯金と資産運用で賄う必要があります。
日本年金機構のホームページでは働き方や受給開始年齢などに応じた年金受給額を試算できるので、ファイヤーを狙っている人は一度確認してみましょう。
実際に投資し始めて資産を形成する
ファイヤーを達成するために貯金するべき金額が決まったあとは、その金額に向けて資産形成を始めましょう。
預貯金でコツコツと資産形成を目指す方法もありますが、毎月一定額を入金しながら資産運用をおこなう「積立投資」も有効です。
積立投資は想定利回りによって毎月の投資額が全く変わってくる点が特徴です。インターネット上では目標金額と目標利回りから、毎月の積立額を逆算できるサイトがあるので活用してみましょう。
例えば6,000万円が目標の人が年利3%で積立投資をする場合、毎月必要な積立額は以下のようになります。
- ・元本:100万円
- ・毎月の積立額:10万円
- ・期待リターン:年3%
- ・投資期間:30年
- ・複利の計算結果:6,044万円
ちなみに、毎月20万円を積立投資できるなら、19年で約6,300万円になる計算です。
毎月の入金額が目標に届きそうもない場合は「支出を減らす」「リスクを取って期待リターンを上げる」「目標期間を延ばす」といった方法でも対処できます。
FIRE成功者が何をしたのかを確認する
ファイヤーを実現するなら、実際に成功者が何をしてファイヤーを達成できたのかを知ることも必要でしょう。
数は少ないながらも、日本人でファイヤーを達成した人物は何人かいます。そのような成功者のなかには、SNSで自分の成功体験を公開していたり、自分がファイヤーした投資方法について書籍にまとめて販売したりしています。
投資の環境は毎日のように変わるので全く同じ方法を真似すればファイヤーできるとは限りませんが、資産運用・資産形成を効率的に進めるためのヒントを得られる可能性もあります。
FIREを目指した資産形成は「積立投資」を基本にするのがおすすめ
ファイヤーを目指す人が選ぶ投資方法にはさまざまな種類がありますが、投資について詳しくない初心者の方が選択する方法としては、インデックスファンドの積立がおすすめです。
インデックスファンドは投資信託の種類の1つで、「日経225」「TOPIX」「S&P500」などの指数に連動した値動きをする特徴があります。実質的に指数に含まれる銘柄すべてを購入したのと同じ値動きをするので、自然に分散投資でリスク分散ができる点がメリットです。
また、日本株式以外に日本債券や外国株式・外国債券などの選択肢があり、リスク許容度に応じて銘柄の組み合わせも簡単に実現できます。
指数が成長すれば、個別株式の銘柄選定について知識がない人でも利益を得られるので、長期投資に最適な方法といえるでしょう。
証券会社によっては100円から購入できるので、「今は自己資金が少ない」という人でも練習のつもりで簡単に投資を始められる点もメリットです。
FIRE(ファイヤー)が難しい場合は「サイドFIRE」という選択肢もある
ファイヤーは年間生活費の25倍の貯金が必要であり、人によってはハードルが高いと感じることもあります。
単なるファイヤーではハードルが高いと感じる方は、「サイドFIRE(サイドファイヤー)」という選択肢も検討すると良いでしょう。
サイドFIREとは、生活費の全てを資産運用で賄うことなく、資産運用と副業などの労働収入を合わせて生活するスタイルです。
ある程度の労働をするのでファイヤーのメリットは小さくなりますが、労働収入を得る前提であれば目標貯金額を安く抑えられます。
例えば通常のファイヤーでは年間生活費の25倍の貯蓄が目安なので、年間240万円の生活費を資産運用で賄うには6,000万円が必要です。
一方、年間生活費240万円のうち100万円を副業で稼ぐことができれば資産運用で得るべき利益は140万円で済みます。
140万円の25倍は3,500万円なので、通常のファイヤーと同じく年率4%で運用するとして元本は3,500万円あれば理論上は生活できる計算です。
通常のファイヤー | サイドファイヤー | |
年間生活費 | 240万円 | 240万円 |
生活費の確保の仕方 | 全額を資産運用 | 一部をアルバイト収入で賄う ※今回は年100万円を副業で得ると仮定 |
25倍の貯金額 | 6,000万円 | 3,500万円 |
完全なリタイアにこだわらないのであれば、サイドFIREという選択肢も検討してみると良いでしょう。
まとめ
FIRE(ファイヤー)は、仕事に捉われない新しい生き方の1つであり、年間生活費の25倍の貯金を年利4%で運用することで運用益だけで生活が可能になります。
ただし、資産運用にはリスクがあるので、ファイヤー後の計画がうまく進まなかったり、元本を取り崩さないと生活できなくなったりするリスクもあります。
ファイヤーのメリット・デメリットを理解したうえで、効率良く資産形成ができるように貯金や積立投資の準備を進めていきましょう。
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