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夫が亡くなったときにもらえる遺族年金って?専業主婦の年金についてFPが解説

年金手帳と夫婦 その他

年金は老後の生活のための制度というイメージがあるかもしれませんが、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」というものもあります。

いまは夫婦ともに健康でも、今後は何が起きるか分かりません。万が一の際に残された人はいくらの年金を受給できるか、いまのうちから考えてみましょう。

本記事では、専業主婦の夫が死亡した際に受け取れる年金の種類や、受給金額の例について解説します。

監修者
監修者佐藤 拓也

全国に約800世帯、約1100名のクライアントを抱えるファイナンシャルプランナー。

家計相談や生命保険の見直し、資産運用の相談、相続・税務対策など幅広く活動し、年間200世帯以上のお客様と個別相談を行いながら、子育てにも尽力している二児のパパ。

【保有資格】
・MDRT入賞9回 ・TLC(生命保険協会認定FP) ・CFP ・IFA(証券外務員1種) ・ファイナンシャルプランニング技能士1級

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夫が死亡した場合に専業主婦がもらえる遺族年金は2種類

「夫が働いて妻が専業主婦」という家庭の場合、夫が先に死亡したときには「遺族年金」を受け取ることができます。

遺族年金は大きく2種類に分かれており、それが「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」です。

 

遺族基礎年金

国民年金や厚生年金の加入者が亡くなったとき、「保険料納付済期間(免除期間を含む)が加入期間の3分の2以上であること」などの要件を満たす場合に、配偶者または子がもらえる年金です。

受給要件には以下の14があり、いずれかの条件を満たす必要があります。 

1. 国民年金の被保険者である間に死亡したとき

2. 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた方が死亡したとき

3.老齢基礎年金の受給権者であった方が死亡したとき

4.老齢基礎年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

引用元:日本年金機構|遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)

 遺族基礎年金で受け取れる金額は、2024220日時点では以下のとおりになっています。

 

【子どもがいる配偶者が受け取るとき】

67歳以下の方
(昭和31年4月2日以後生まれ)
795,000円 + 子の加算額
68歳以上の方
(昭和31年4月1日以前生まれ)
792,600円 + 子の加算額

【子どもが受け取るとき】

遺された子ども1人につき、次の金額を子どもの数で割った額が、受給額になります。

・795,000円+2人目以降の子の加算額
・1人目および2人目の子の加算額 各228,700円
・3人目以降の子の加算額 各76,200円

引用元:日本年金機構|遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)

 

遺族厚生年金

遺族厚生年金は、会社員や公務員のように、国民年金と厚生年金の両方に加入していた方が死亡した場合に遺族が受け取れる年金です。

受給要件には以下の14があり、いずれかの要件を満たす場合に厚生年金を受給できます。

1.厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき

2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気やけがが原因で初診日から5年以内に死亡したとき

3. 1級・2級の障害厚生(共済)年金を受けとっている方が死亡したとき

4.老齢厚生年金の受給権者であった方が死亡したとき

5.老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡したとき

引用元:日本年金機構|遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)

1および2の要件について、死亡日の前日において「保険料納付済期間(保険料免除期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上あること」などの要件を満たすことが必要です。

受給の優先順位は「子のある配偶者→子(18歳になった年度の331日までにある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方)子のない配偶者父母祖父母が基本であり、子どもがいる配偶者なら優先して受給できます。

 

遺族厚生年金の年金額の考え方は、以下のとおりです。

遺族厚生年金の年金額:死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額

※受給要件の12および3に該当する場合、報酬比例部分の計算で、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。

日本年金機構によれば、令和5年度の年金額の例(67歳以下の場合)は以下の通りです(令和54月分から)。

令和5年度(月額) 参考:令和4年度(月額)
国民年金(老齢基礎年金(満額)) 66,250円 64,816円
厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)※ 224,482円 219,593円

※平均的な収入(賞与を含む平均標準報酬43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金※老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))

引用元:日本年金機構|令和5年4月分からの年金額等について

 

寡婦年金

寡婦年金は、国民年金保険料を10年以上支払った第1号被保険者である夫が、年金を受け取らずに死亡した際に妻が受給できる年金です。

受給対象は「婚姻期間が10年以上の妻が6065歳になるまで」であり、夫の第1号被保険者期間だけ計算した老齢基礎年金額の「4分の3」を受給できます。

例えば、夫の老齢基礎年金額が50万円の場合は、その3/4である375,000円が寡婦年金として受け取れる金額です。

注意点として、夫が老齢基礎年金または障害基礎年金を受給したことがある場合、または妻が老齢基礎年金を繰り上げ受給している場合は、寡婦年金の受給対象から外れます。

また、寡婦年金も死亡一時金も両方を受け取れる場合、どちらを受給するか選択が必要です。

 

死亡一時金

死亡一時金は、亡くなった故人が第1号被保険者として保険料を「36ヶ月」以上納めており、年金を受け取らずに死亡した場合に遺族が一時金を受け取れる制度です。前述した寡婦年金とは併用不可の制度であり、両方を受け取る資格があるときは有利な制度を選択することになります。

死亡一時金を受け取れるのは、故人によって生計を同じくしていた遺族です。優先順位が1・配偶者、2・子、3・父母、4・孫、5・祖父母、6・兄弟姉妹になっています。

受給できる金額は年金保険料を納めた月数、免除日数の合計月数によって変わり、具体的には以下のとおりです。

保険料納付月数 受給できる金額
36月以上180月未満 120,000 円
180月以上240月未満 145,000 円
240月以上300月未満 170,000 円
300月以上360月以上 220,000 円
360月以上420月未満 270,000 円
420月以上 320,000 円
付加保険料の納付済月数が 36 月以上ある場合 上記金額に8,500円が加算

出典:厚生労働省|死亡一時金制度の概要

 

なお、離婚や配偶者が亡くなったことが原因で母子家庭・父子家庭になった際は、児童扶養手当を受給できます。

受給額は子どもの人数や所得によって異なり、具体的な支給額は以下のとおりです。

対象児童数 全額支給 一部支給
1 44,140円 44,130円~10,410円
2 54,560円 54,540円~15,620円
3 60,810円 60,780円~18,750円

出典:静岡県|児童扶養手当について

なお、遺族年金を受給している方でも、「児童扶養手当の金額が年金額を上回る」という条件を満たすなら児童扶養手当との差額を受け取れます。

 

共働き世帯の妻がもらえる年金は減額される?

共働き世帯の遺族が遺族厚生年金を受け取る場合、受け取れる遺族年金額が減額になる可能性がある点に注意が必要です。

妻が会社員(共働き)の場合、妻がもらえる年金額は以下の通りになります。

  • ・自分が受け取る老齢厚生年金:全額を受給できる
  • ・遺族厚生年金:妻の老齢厚生年金に相当する金額が支給停止

2つ例を出して解説します。

妻の老齢厚生年金:80万円

夫の遺族厚生年金:60万円

・妻の老齢厚生年金のほうが夫の遺族基礎年金より高額

・夫の遺族厚生年金は全額が支給停止

 

妻の老齢厚生年金:60万円

夫の遺族厚生年金:80万円

・妻の老齢厚生年金のほうが夫の遺族基礎年金より低額

・夫の遺族厚生年金は60万円まで支給停止

 

会社員の夫が死亡した場合に専業主婦は中高齢寡婦加算が加算される

実は、遺族厚生年金の金額について、条件を満たすと増額になる可能性があります。いまのうちに確認しておきたい加算制度の名前は「中高齢寡婦加算」です。

中高齢寡婦加算は、以下の要件を満たした場合に受け取れます。 

  • ・夫が亡くなったとき、妻が40歳以上65歳未満であること
  • ・妻と生計を同じくしている子がいない
  • ・遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻が、子が18歳到達年度の末日に達したなどのため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき※障害の状態にある場合は20歳に達したケース

受け取れる受給金額は、596,300円(年額・2024年2月現在)です。

ただし、妻が65歳になると自分で老齢基礎年金を受給できるため、中高齢寡婦加算はなくなってしまいます。 

 

会社員の夫が死亡すると専業主婦が受け取れる可能性がある年金以外のお金

これまで会社員の夫が亡くなった場合に、専業主婦や共働きの主婦が受け取れる公的な年金などを紹介してきました。

受け取れる金額は家庭によって異なるものの、一般的には「子育てや老後に十分な金額とは思えない」と考える人が多いでしょう。

そこで確認したいのが「公的年金以外に受給できるお金」です。

ここでは、夫が生前に資産運用していたり、会社の規定に死亡退職金が定められたりしていた場合に、妻が受け取れるお金について解説します。 

 

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で決めた掛金を毎月運用し、公的年金にプラスして受け取れる私的年金です。受取額は積立金と運用損益の合計であり、運用成果に応じて変動します。

  • ・メリット1:掛金が全額所得控除
  • ・メリット2:iDeCo加入期間の利益や運用益が非課税
  • ・メリット3:受け取り方法を年金や一時金で選択でき、一定の金額まで税制メリットがある

上記のようなメリットがあることから、資産運用と節税を同時に進められる制度として注目度が高いです。

仮にiDeCoの元本+利益を受け取る前に加入者が亡くなったとしても、iDeCoで積み立てた資産がなくなるわけではないのでご安心ください。

万が一途中で亡くなっても、貯めたお金は「死亡一時金」として遺族に返還されます。

ただし、通常の相続の順位とは受け取る順番が異なる点に注意が必要です。

 

iDeCoの死亡一時金の請求順位】

  • ・第1順位:配偶者※死亡の当時、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む
  • ・第2順位:(1)子(2)父母(3)孫(4)祖父母(5)兄弟姉妹の順で、死亡した人の収入で生計を維持していた人
  • ・第3順位:第3順位の人以外、かつ死亡した人の収入によって生計を維持していた親族
  • ・第4順位:第3順位の人に該当しない人で、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹

 

企業型確定拠出年金

確定拠出年金は、前述のiDeCo(個人型確定拠出年金)と、企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)の2種類があります。

加入対象者は企業型確定拠出年金を導入している企業の従業員に限定されていること、掛金は個人ではなく基本的に会社からかけるという違いがあります。iDeCoの掛金は全額所得控除(所得税・住民税軽減)されるのに対し、事業主が支払った掛金は所得にみなされないという違いもあります。

企業型DCの加入者が死亡した場合、遺族が死亡一時金を受け取れます。受取人について、一般的には以下のように順位が定められています。 

  • ・第1順位:配偶者※死亡の当時、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む
  • ・第2順位:(1)子(2)父母(3)孫(4)祖父母(5)兄弟姉妹の順で、死亡した人の収入で生計を維持していた人
  • ・第3順位:第3順位の人以外、かつ死亡した人の収入によって生計を維持していた親族
  • ・第4順位:第3順位の人に該当しない人で、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹

また、企業型の死亡一時金を受け取るにあたり、死亡から早く受け取るほど、税制優遇されることも覚えておきましょう。

死亡一時金を受け取るタイミング

税制優遇

死亡後3年以内の受け取り

みなし相続財産であり、「500万円 × 法定相続人の数」が非課税

死亡後3年以上5年以内の受け取り

受取人の一時所得となり、所得税の対象

死亡後5年経過後の受け取り

相続財産であり、他の財産と合わせて相続税の手続きが必要

 

死亡退職金

死亡退職金とは、会社員や公務員が亡くなった場合、遺族に支払われる退職金のことです。

受取人は会社の規定によって異なりますが、一般的に法定相続人が受取人になるでしょう。

死亡退職金は「みなし相続財産」であり、「500万円 × 法定相続人の数」が非課税です。

「法定相続人」の数には相続放棄した人も含み、非課税枠を超えた分は相続税の対象として他の相続財産と合わせて手続きが必要です。

ただし、死亡後3年が経過した後に死亡退職金を受け取った場合、受取人の一時所得になります。所得税の納税対象にならないよう、万が一の際はスムーズに受け取り手続きが必要です。

 

遺族年金だけの生活が心配な専業主婦ができる対処法

ペンを持つ専業主婦

前述したとおり、一家の大黒柱に万一があったときは遺族基礎年金や遺族厚生年金を受け取れます。ただ、自分の老後や子供の教育費用を考えたとき、収入よりも支出が増えるタイミングも少なくないはずです。

お金の不安を払拭するためには、年金以外でお金を捻出する方法を知っておくことが大切です。

ここでは、専業主婦の方が今日から実践できる、お金を節約したり万が一に備えたりするポイントを紹介します。

 

支出を抑えて貯蓄を増やす

毎月つけている家計簿をみて、無駄になっている部分や支払いすぎている項目がないかを確認してみましょう。

仕事で毎月の収入を1万円増やすのは非常に大変ですが、1万円の支出を減らすことでも同様の効果が得られます。

毎月の支出には「変動費」「固定費」がありますが、なかでも節約に効果があるのは毎月固定金額の出費が発生する「固定費」です。 

【固定費の例】 
・水道光熱費
・スマートフォンやWi-Fiの通信費
・家賃
・生命保険の保険料
・サブスクサービスの月額料金 など

例えば、スマートフォンの契約をキャリアから格安SIMに切り替えるだけで、月に数千円の節約になります。

今は使っていないサブスクサービスを解約したりプランを変更したりするだけでも数百円~数千円の節約になるはずです。

固定費は一度削減できれば、その後もずっと節約効果が持続する点に特徴があります。

項目ごとに見直さなければいけないという手間はかかりますが、家計に余裕を持たせたいならおすすめの方法です。

 

適切な生命保険に加入する

夫に万が一のことがあって専業主婦が残されてしまう事態を想定して、健康なうちに夫が生命保険に加入するという方法が有効です。

万が一の際に死亡保険金が支払われる生命保険に加入することで、残された家族の生活費をカバーすることができます。対象になる生命保険は「定期保険」「収入保障保険」「終身保険」といった、いわゆる死亡保険が該当します。

保険金額をいくらにするかを決める際は「多い方が良い」と思いがちですが、必要以上の保険金額を設定してしまうと、毎月支払う保険料負担が大きくなり、家計を圧迫する原因になります。

死亡保険金の保障額は「世帯主(夫)が亡くなったあとの支出」から「世帯主が亡くなったあとの収入」を差し引き、不足する金額を指定するのがセオリーです。

【世帯主が亡くなったあとの支出の例】
・子どもの教育費用
・残された家族の日常の生活費
・葬儀費用 など 

【世帯主が亡くなったあとの収入の例】
・配偶者の労働収入
・家族の労働収入
・現在の貯蓄
・遺族年金 など

生命保険の見直しポイントとは?FPが徹底解説

 

資産運用を考える

まとまった金額の貯金があるのであれば、預貯金の一部を資産運用に回すというのも1つの方法です。

なかでも「iDeCo(イデコ)」「NISA」と呼ばれる制度は利益が非課税になるなど税制メリットが大きく、効率的に資産形成を目指せます。

iDeCoとNISAに関しては以下の記事で詳細に紹介しているので、こちらも併せてご覧ください。

iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)とは?3つのメリットや仕組みをわかりやすく解説

2024年から始まる新NISA制度とNISA制度改正をFPが徹底解説!

 

収入を増やす

いまの家族の収入源が夫のみ(妻は専業主婦)というパターンの場合、妻も働きに出て収入を増やすというのも選択肢の1つです。

子どもが小さくて外で働くのが難しい場合は、内職や「クラウドソーシングサイト」を探すことで在宅仕事が見つかる可能性もあります。

ただし、毎年の収入が一定金額を超えると社会保険料の負担が発生してしまい、結果として手取りが少なくなる「収入の壁」には注意が必要です。

例えば従業員101人以上の企業などで週20時間以上勤務している場合(※令和6年(2024年)10月以降は、51人以上の企業に変更)、厚生年金保険や健康保険の加入が必要になります。

もちろん「傷病手当金や出産手当金を受けられるようになる」「将来もらえる年金が増える」といったメリットはありますが、働き損だと感じない程度に労働時間を抑えることも考えましょう。

扶養の範囲内で働くには?年収の壁と注意点をFPがわかりやすく解説

 

まとめ

専業主婦の夫が死亡した場合、受け取れる年金は夫の働き方によって「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」の2種類があります。遺族年金と中高齢寡婦加算、寡婦年金、死亡一時金などでいくらの年金が手元に入るか、万が一のときに備えて計算してみましょう。

一般的には遺族年金だけで生活するのは難しいため、夫婦で話し合って収入を増やしたり、資産運用をしたりして年金以外の備えもしておくと良いでしょう。 

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