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扶養の範囲内で働くには?年収の壁と注意点をFPがわかりやすく解説

その他

日々の生活を送ったり充実した時間を過ごしたりするのに、どうしても必要になるのが「お金」です。配偶者である夫の稼ぎにプラスして家計を助けるために、パートとして働く方も多くいるのではないでしょうか。

ただし、夫が会社員で妻が扶養に入っているようなケースでは、妻がパートで稼ぐ年収によって、夫の扶養から外れたり自分で税金を納めたりする必要があります。年収次第では「もう少し下の年収と手取りが変わらない・少ない」ということになる可能性もあります。

一定年収を超えることで本人や配偶者の手取り額に影響する「収入の境界線」が年収の壁と呼ばれるものです。年収の壁を超えることで「本人が負担する税金の種類が増える」「配偶者が控除を受けられなくなる」といった影響があります。

充実した生活と収入のバランスを考えるためにも、扶養から外れてしまうような年収がいくらなのかは事前に把握しておきましょう。

本記事では「扶養」の内容をおさらいしつつ、扶養の範囲内で働きたい人が意識したい年収の壁を紹介します。

監修者
監修者佐藤 拓也

全国に約800世帯、約1100名のクライアントを抱えるファイナンシャルプランナー。

家計相談や生命保険の見直し、資産運用の相談、相続・税務対策など幅広く活動し、年間200世帯以上のお客様と個別相談を行いながら、子育てにも尽力している二児のパパ。

【保有資格】
・MDRT入賞9回 ・TLC(生命保険協会認定FP) ・CFP ・IFA(証券外務員1種) ・ファイナンシャルプランニング技能士1級

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本人の収入による税金・社会保険料への影響は?

本編に入る前に、本記事で解説する「扶養内で働く」の意味を分かりやすく理解するために、会社員の妻として働く人(本人)の年収と、収入を得る時期、収入が上がったことによる影響を表にまとめました。

本人収入(対象時期) 年収を超えることで起こること

98万円(1-12月)
※通勤費を除く

本人に住民税が発生しはじめる
103万円(1-12月)
※通勤費は除く
本人に所得税が発生しはじめる
106万円(月8.8万円の月収か否か)
※通勤費・残業代除く
本人の勤務先などが一定条件を満たす場合、その会社の社会保険に加入する義務が生じる
130万円(見込みで判断) 配偶者の扶養を外れて、原則、自分で社会保険に加入する
150万円(1-12月)
※通勤費を除く
年収150万円を超えると段階的に配偶者特別控除が段階的に減少し、配偶者の増税に繋がる
201万円の壁(1-12月)
※通勤費除く
配偶者特別控除の恩恵が受けられなくなり、配偶者の増税に繋がる

年収が一定以上になることで「自分の税金や社会保険料の支払いが増える」「配偶者が配偶者控除を受けられなくなる」という事態が起こります。

これらの税金や社会保険料が発生する境界になる年収が、いわゆる「年収の壁」と呼ばれるものです。

そもそも「収入」と「所得」は何がちがう?

本記事では、扶養の範囲内で働くには年収いくらまで抑えれば良い?」という点をテーマにしています。テレビでよくみる「〇〇万円の壁」という単語も登場しますが、その前に「収入」「所得」の違いを把握しておくと理解がスムーズに進みます。

まず、収入・所得の言葉の意味の違いを見ておきましょう。

収入とは

「収入」は、会社員やアルバイトでいえば、税金や社会保険料などを差し引いた手取りではなく、差し引く前の「総支給額」のことです。

一方、自分で事業を運営している個人事業主の場合、事業運営をしたことで手元に入ってくる「売り上げ」が収入です。

所得とは

「所得」は、会社員やパート・アルバイトは経費計算や税金計算をしませんが、年収に応じて「給与所得控除」が定められています。収入金額から給与所得控除を差し引いた残りの数字が「所得」に該当します。

個人事業主の場合、収入にあたる「売上」から、事業にかかる必要経費(仕入代、交通費、交際費など)を差し引いて残った金額が「事業所得」です。

パート主婦に関係する年収の壁の種類

税制上の扶養・社会保険の扶養の両方に関係する代表的な夫婦関係が「夫が正社員・妻がパート主婦」でしょう。

ここからは、夫の扶養に入っているパート主婦が意識するべき「年収の壁」について解説します。

98万円の壁を超えると本人の住民税がかかる

98万円の壁は、「住民税」の納付義務が発生する壁です。

住民税はその地域に住む人全員が納めるわけではなく、以下の控除の範囲内の金額で働くなら納める必要がありません。

  • ・基礎控除:43万円(年収2,400万円以下の人に適用)
  • ・給与所得控除:55万円

上記の合計である98万円を超えることで、はじめて住民税の納付が必要になります。

ここでいう「年収」とは、毎年11日から1231日までの合計金額です。被扶養者(パート主婦)の年収が98万円を超えてくると、超えた金額の10%を税金として納めることになります。

103万円を超えると本人に所得税がかかる

パート主婦の年収が103万円を超えた場合、パート主婦自身に「所得税」がかかり始めます。

103万円という年収の壁は多くの人に意識されている壁の1つですが、その原因として「年収103万円は以前までの税制なら、パートナーが配偶者控除を受けられる満額の金額だった」ことが挙げられます。

2018年以前、夫の配偶者控除を満額受けられる妻の年収上限が103万円だったこともあり、税制上の扶養範囲内で働きたいパート主婦にとって103万円は最大の壁の1つでした。

現在の年収103万円の壁は、パート主婦自身に所得税がかかる壁として覚えておきましょう。

106万円を超えるとパート先の社会保険に加入する

106万円の壁は、社会保険への加入義務が発生するボーダーラインです。被扶養者(本記事の例ではパート主婦)の年収が106万円を超え、かつ特定の条件を満たす働き方をしている場合は勤務先の社会保険に加入する義務が発生します。そうなると自分に社会保険料の負担が発生するため、実質的に手取りが減少する可能性があります。

202210月以降、社会保険の加入条件のなかの「会社の人数制限」が501人以上から引き下げられ、101人以上の会社から対象になりました。

【社会保険への加入条件】
202210月から)

・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満

・所定内賃金が月額8.8万円以上
 ※基本給及び諸手当
 ※残業代・賞与等は含まない

2ヶ月を超える雇用の見込みがある

・学生ではない

・勤務先企業の従業員数が101人以上

出典:厚生労働省「社会保険適用拡大についてご案内します」

なお、勤務先企業の従業員数について、202312月現在は「101人以上」ですが、202410月からは「51人以上」に変更になります。

今は上記の条件を満たさなくても、202410月からは社会保険の加入義務が発生する人もいるので、この点にも注意が必要です。

130万円を超えると全ての人が社会保険上の扶養を外れる

年収130万円の壁は、前述の条件に関係なく社会保険上の扶養から外れる壁のことです。

年収が130万円を超えた場合は自身の勤務先の厚生年金・健康保険に加入することになり、それができない場合には、自分自身で国民年金・国民健康保険に加入することになります。

勤務先の社会保険に加入する際は保険料が会社と折半になりますが、個人で国民年金や国民健康保険に加入する場合は全額が自己負担です。

手取りに大きな影響を与える壁であるため、年収106万円の壁と一緒に、パート主婦のあいだで強く意識されています。一般的に年収130万円で約20万円の保険料負担になります。

なお、130万円という金額は掛け持ちも含めた収入で判断され、「毎月の収入が常時年間130万円に相当するか」で判断されます。

年収106万円も社会保険に入るボーダーラインになる年収ではありますが、対象期間に以下のような違いがあることは覚えておきたいところです。

年収106万円の壁

月収が「いま」8.8万円かが見られる

年収130万円の壁

向こう1年間の年収が130万円を超えるかという見込みを見られる

いま現在の収入が月額8.8万円を超えることが要件の1つになっている年収106万円の壁では、1年間の収入の結果を待たずに社会保険に加入する可能性があります。

一方の年収130万円の壁では、年収130万円を超える見込みとなったら扶養から外れて自身で社会保険に加入する形になります。年収をカウントする対象期間が異なる点に注意が必要です。

150万円を超えると「配偶者特別控除」の額が減り出す

年収150万円は、配偶者特別控除の金額が減額され始める壁です。

パート主婦など給与収入を得ている妻の配偶者は妻の年収が103万円までは配偶者控除、年収103万円を超えても年収150万円までは配偶者特別控除が38万円適用されます。

年収150万円までは配偶者控除・配偶者特別控除が満額である38万円が適用されていたものが減少することで、夫の所得税や住民税が増えます。その結果、夫の手取額の減少につながります。

なお、被扶養者(パート主婦)の年収が201万6,000円を超えると控除額がゼロになります。これも「201万円の壁」として覚えておくと良いでしょう。

なお、配偶者控除や配偶者特別控除は夫本人の年収によっても減少していき、年収1,220万円を超えると控除対象外になります。

扶養の範囲内で働くなら、106万円と130万円の壁を意識する

ここまで「98万円」「103万円」「106万円」「130万円」「150万円」「201万円」と、パート主婦が意識するべき年収の壁をいくつも紹介してきました。

しかし、近い年収にいくつもの壁があることで「どれが1番重要なの?」と不安に感じている方もいるのではないでしょうか。

結論からいえば、手取りを意識するなら、社会保険に関する壁に注目することをおすすめします。社会保険料の負担は年間15~20万円程度と大きく、手取りを少しでも増やすなら税金の壁よりも優先して考えたいところです。

前章で紹介した壁のうち、106万円と130万円の壁は、社会保険料の加入に関する壁として手取りに大きく影響します。

また、106万円・130万円以内の年収であれば配偶者特別控除が満額で受けられて夫の手取りに影響しないため、多少年収が前後しても世帯収入を維持しやすくなります。

扶養の範囲内で働くメリット・デメリット

扶養の範囲内で働くことで、税金や社会保険料を抑えられることは、すでに解説したとおりです。

しかし、長い目でみたときに、必ずしも扶養の範囲内に収めることだけが正解とは限りません。

ここでは、妻が扶養内で働くことのメリット・デメリットを紹介します。

扶養の範囲内で働くメリット

会社員の夫を持つ妻が扶養範囲内で働くメリットは、これまで紹介してきたとおり、所得税・住民税や健康保険料(社会保険料)の負担を抑えられることです。

費用負担を抑えて手取りをしっかり確保しつつも、配偶者である夫の社会保険に加入することで、健康保険などの社会保障を一通り得られる点もメリットといえます。

例えば、年金については扶養に入ることで第3号被保険者という扱いになり、自分で保険料を支払うことなく将来の年金を受け取れます。

扶養の範囲内で働くデメリット

扶養内で働くのはメリットしかないように思えますが、もちろんデメリットもあります。

まず考えられるのが、将来受け取れる年金額の減少です。

扶養に入った人は国民年金に加入することになるため、自分で厚生年金保険料を支払ったときと比べ、将来に受け取れる金額が少なくなることが考えられます。

将来の年金額は支払った保険料と支払った期間によって変わるので一概にはいえませんが、扶養のままで老後の生活に問題ないかは一度計算してみると良いでしょう。

また、扶養者であるため、出産した場合の「出産手当」や、病気やケガで仕事を休んだ場合に受け取れる「傷病手当」は受け取れません。

老後の生活費はいくら必要かFPが解説!2,000万円でいいの?

扶養の範囲内で働く際に知っておきたい注意点

扶養の範囲内で働く際に意識したい「〇〇万円」の壁ですが、年収100万円台前半の狭い範囲に集中しています。

計算違いで税金や社会保険料の負担が増えないようにすることや、自分にとってコスパが良い働き方ができるように、これから紹介する注意点をチェックしておきましょう。

社会保険の「月額賃金8.8万円」に交通費は含まれる?

年収106万円の壁の項で、社会保険に加入する条件として「月収8.8万円」という条件を紹介しました。

この月額8.8万円に、交通費やインセンティブは含まれないか気になりませんか?

結論からいえば、「臨時手当」「所定外手当」は、月収には含まれません。

臨時手当

賞与やボーナス、慶弔手当など

所定外手当

時間外労働手当、休日出勤手当、通勤手当、家族手当など

例えば、月収85,000円で働いている人が毎月5,000円の交通費を受け取っているとしましょう。合計で収入は9万円になりますが、交通費は計算に含まれないので社会保険に加入する条件を満たしません。

ちなみに、「時間外労働」は、労働基準法で定められた「週40時間」「18時間」を超えた場合に割増賃金が支払われた場合の話です。パート主婦の労働時間ではほとんどの場合は割増賃金に該当しません。

いわゆる損な働き方は年収いくらくらいか

あくまでも目安ですが、手取り額が少なくなりやすいのは年収130150万円の範囲です。

年収98万円~103万円以下なら、所得税がかからず、住民税がかかっても数千円程度であまり負担は大きくありません。

一方、年収130万円を超えると原則として社会保険料を負担することになります。社会保険料は一般的に収入の15%くらいが目安であり、年収130150万円程度では手取り額があまり大きく変わりません。

保険料を差し引いてプラスが出始めるのは、年収150~160万円を超えたあたりでしょう。

年収130万円前後で働くなら、もう少し安く抑えて社会保険料の負担をなくすか、もっと働いて保険料以上に手取を増やす方が良いかもしれません。

まとめ

扶養には税制上の扶養と社会保険の扶養があり、手取りが減る「壁」が年収98万円を超えたところから201万円を超えるまで段階的に登場します。

なかでも社会保険料の金額が大きいことから、年収106万円・130万円を意識して働く必要があるでしょう。

ただし、扶養内で働く方が良いか、扶養を外れても2人で働いたほうが良いかは、家庭のライフプランによっても異なります。

自分達の家庭に合った働き方に悩む場合はファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみるのも1つの方法です。

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